【是枝監督最新作】『怪物』感想・考察│怪物だーれだ?噂と真実、人間の見えない部分を描き観客を裏切る!


今回は、是枝監督の最新作、『怪物』という映画についての感想や考察を話していきます。
最初に言っておきますが、この作品は最高です。もうこんな記事読んでいる時間があったらはよ映画館行け!!と思う作品です。
この記事を読んでいただくと
- 『怪物』がどんな作品か
- 特にどんな人にオススメか
- 映画素人大学生の感想や考察
が分かるようになっているのでぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
既に観た!という方は、コメントに感想など書いていってくださいね。
作品情報
公開日 | 2023/6/2 |
上映時間 | 125分 |
監督 | 是枝裕和 |
脚本 | 坂元裕二 |
受賞 | 第76回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 脚本賞 坂元裕二 |
『万引き家族』の是枝裕和監督と『花束みたいな恋をした』「大豆田とわ子と三人の元夫」の坂元裕二さん脚本の最強タッグ。
さらに音楽には先日亡くなった坂本龍一さんがピアノ楽曲を提供。
『万引き家族』の多くのスタッフが本作の制作にも関わった。
あらすじ・特にオススメな人

大きな湖のある郊外の町。
息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。
それは、よくある子供同士のケンカに見えた。
しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。
そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した―。
ABOUT THE MOVIE | 映画『怪物』 公式サイト (gaga.ne.jp)
- 深い物語が好きな人
- しっかり作り込まれた作品が好きな人
- 考えさせられる映画が観たい人
- とりあえず観ろ
いいですか、もしこの作品を観る可能性が1ミリでもあるという方は早めにブラウザバックしてください。
こんな記事を読んだくらいじゃこの作品の価値はそう簡単には下がりませんが、事前情報なしで観たほうが絶対に最高の映画体験ができると思います。
読んでもネタバレなしの部分までにしておいてくれ…。
テーマが分かりやすくも複雑で、映画としての美しさも十分な、映画初心者から映画好きまで幅広い方々が楽しめる作品になっています。
ここ数年でもとにかく推したい一作です!
感想・魅力(ネタバレなし)

最強制作陣、言うことなし
映画好き名乗り始めてまだ1年足らずの私、恥ずかしながら、これまで是枝監督の作品を観たことがないんですよ。本当すみません。
世界で評価されている日本の監督だし、そこらへんは不安などなく鑑賞しに行ったんですが、やはり布陣が最強でしたね。
監督や脚本がすんごいのはさることながら、音楽の坂本龍一さん、役者陣、そのほかの制作スタッフも本当にこだわってこだわって作品を作り上げたんだろうなと感じるような仕上がりです。
俳優さんと監督や脚本の坂元さんとの信頼関係が覗けるパンフレットもとても見応えがあるものになっています。
ヒューマンドラマ好きな方は絶対にハマる作品だと思います。だからもう、とにかく見て!としか言えない…。
そして、ここからは俳優陣に対する個人的な感想になるのですが、なんだか不憫な永山瑛太を、私はとっても大好きです。そして、オカンな安藤サクラも大好きです。
さらに注目すべきは子役のお2人。キービジュアルに写っている2人ね。
黒川想矢くんと、柊木陽太くんというらしいです。
この子達について深く語ってしまうとネタバレになってしまって、これから観るという方には非常にもったいないので、とにかく注目して、とだけ読者諸君には伝えたいです。
私はまたまたとんでもない原石を発見してしまったような感覚です。
徐々に明らかになる真実
この作品の特徴は公式で発表されている情報がかなり少ないことだと思っています。
まず、タイトルの「怪物」。
子供をさらう怪物が出てくるのかな?誰か「怪物」と呼ばれるような人間がいるのかな?もしかしてホラー寄り?
なーんて想像が膨らみますよね。
また、出来事の概要すらもつかめません。
「それは、よくある子供同士のケンカに見えた。」って、なんじゃそりゃ!!!!
ビジュアルもなんだかホラー作品っぽくて、ある層からは興味持たれそうではありますが、明らかになっていないことが多すぎてワクワク感を感じるほどの興味が湧かないんですね(個人的な感想)。
でも、それでいいんです。
「あ、是枝監督の作品か。話題になってるから観とくか。」
この作品を観る動機はこれだけあれば大丈夫です。安心してください。面白いから。
全然予測できない映画の内容を、その場で観て楽しんでください。真実は映画館で知るべきものです。
映画が始まってからもしばらくはこの世界観に振り回されることになるわけですが、決して難しい物語でもありません。自分の目で真実を観て、そしてあなたの視点で解釈をして、考えてほしいと私は思います。
感想・考察(ネタバレあり)

ここからは予告以上の内容やネタバレにあたる部分にも触れています!
まだ観ていないという方は注意です!!
観客による怪物探しの結末
私のこの職業柄、しっかり映画を集中して観て、考察や感想を書けるようにしなくては!という意識で映画を観てしまうんですよね。
今回の作品は「怪物」。映画の序盤から怪物を探してしまいました。
この作品はそれぞれの視点から火事の日~台風の日を繰り返す形で見せられていきます。
こういった構造になっていることを知らない私は、第一幕の部分は怪物探しに躍起になっていました。
だって先読みが好きだもの!伏線回収とか楽しみじゃん!
怪物って誰なの?湊をいじめている人物?保利先生?校長?そのほかの先生?もしかしてモンスターペアレントのこと?虐待する親も出てきた。噓をつく生徒?メディア?
怪物になりうるものはいくらでもありました。
でも、結末に用意された真実には、私たちの想像する怪物などいなかったのです。やられたなと思いました。裏切られたーー!
誰が「怪物」か、なんてどうでもいいことでした。作品の本当の中心人物である彼らにとっては。
そして2人が中に抱える怪物に悩む第三幕はつらくも美しい…
2人の確かな絆、恋心の物語の中に入り込む怪物なんていない。ただの大人がいるだけ。大人たちは怪物になりうるけど、2人の間には割って入ることはできないと思います。
自分の中にある怪物と戦い、嘘を重ねた結果様々な人が怪物になっていっていたんですね。
台風が過ぎて、新しい世界に降り立ったような2人。あのあとどうなるのかな。
2人がこれから一緒にいられるのかはわからないし、今それぞれ抱える生きづらさをどうしていくかは私たちの想像に委ねられるところですが、明るい未来を望めるラストシーンだと思います。
裏切られたインパクトを忘れるほどさらに深く心に残るラストシーンに、感動せずにはいられませんでした。
子どもにしかわからない、複雑な世界を見る私
私は20歳の大学生。この作品の登場人物たちとは何一つ立場が被っていません。
子を持つ母親でもなければ、教師でもないし、孫もいないし男子小学生でもありません。
だからこそ第三者の視点から、怪物探しに溺れ、勝手に裏切られ、この映画を客観的に楽しむことができました。
この作品のテーマは「見えない部分」。人生で見えない部分があるのは当然ですよね。
映画では湊視点からの真相がわかるようになっているけれど、本当に最後に大人たちは真相に気付いているのでしょうか?
保利先生は湊と依里には接点があり、実は湊はいじめていなかったことはわかるのだけれど、二人の間に友達以上の感情、恋愛感情があったことには気づいたのでしょうか。
そして早織もまた、湊が早織が望むような「幸せ」にたどり着けないことに絶望していたことに気づいたのでしょうか。
ここは大人が、外部の人たちが最後まで触れることのできなかった部分です。
子供だってそう簡単じゃないんですよね。
大人が「幸せ」を定義して、本当は本人が一番分かっているのに大人が子供だと思って介入して、「育てる」という名目でどこか見下しているのではないでしょうか。
もちろん子供は親や周囲の大人たちが必要です。
でも彼らも同じ人間で、同じだけの深さを持っているのかもしれないということにこの映画を見て気づかされました。
見えない部分への想像力の重要性を改めて考え直させられる作品でしたね。
ここでふと気になったのは、この作品を小学生が見たらどんな感想を持つんだろうと興味本位で思いました。
あ、もしこの記事を読んでいる方で小学生などいたらぜひ感想コメントくださいね。期待しています。
やはり、母親の立場の人が見たら早織にはかなり共感できたりするのかな。
私がニュートラルな視点で見られる分、他の人がどんな感想を持つのかも気になる作品でした。
ちょっと余談にはなりますが、個人的に依里が転校することを湊に伝えた後に、湊が寂しさを伝えるシーンは胸がギュンってなりました。
私的に見た目や落ち着き方からどこか湊のほうが大人っぽく見えていたのに、急に子供っぽい甘えるような声で依里に迫るシーンの演技力に脱帽…。(驚きすぎてセリフ覚えてない←)
謎は謎のままでいい
この作品は早織視点、保利先生視点、湊視点の三幕構成になっていました。
初めの二幕で観客は翻弄され、三幕目に出来事の真実を知る。
物語の大部分の謎は第三幕で解決するのですが、実は解決され切っていないことも多々あるんですよね。
校長が一体どんな人物なのか。そして、クラスメイトの女の子は何を考えているのか。
もちろん他にも明らかでないことはあるのですが、ここではこの二人について焦点を当てて語っていきたいと思います。
まずは校長。
あの人は湊視点以外の場面ではヤバい人にしか見えませんでしたね。
「手と鼻の接触」の場面とか、日本語が通じなさ過ぎてイライラしましたし、もはや笑っちゃうレベルでしたよ。
スーパーを走り回っている子どもに足を引っかけて転ばせる場面も、んーーーー(言葉にならない叫び)
これだけ不快感を持つ人物だったのに、湊視点だと全く違う人物に見えるのです。
そして湊の隣の席の女の子。
シーンの要所要所に登場しているんですよね。あの子。
湊に向かって意味深な視線を向けたり、先生を惑わせるような発言をしたり。依里をいじめている子達が絵の具雑巾を「パースパース」しているときに湊にパスしたのもあの子です。
うーん、謎深きあの子…。
この二人の存在が中心となって、観客は第三者視点から観ているのに全知全能の神の視点になりきることができなくなっているんじゃないかと思います。
私たちも、あの作品の中の一部なんだと私は考えます。
保利先生がガールズバー通いをしている、校長先生が孫を轢いてしまったなどの噂に流される人物たちと同等の立場にいるのです。
偏見を持って登場人物を見て、怒ったり同情したりして、でも結局本当の事はわからない。
観客を全知全能にしないことでテーマ性をストレートに伝えながらも簡単な共感にとどめない深みを生んでいると思います。

まとめ
今回は、『怪物』という映画について、感想や考察を話していきました!
とっても心が揺さぶられる作品でした…。
まだ観鑑賞なのにここまで読んでしまった方々、後悔してないで映画館に行ってくださいね。
知っていても素敵な映画体験になると思います。
まだまだ語りたいことはいっぱいあるし、1回じゃ拾い切れていない部分も絶対あるからまた観に行きたい…!
もしこの記事を読んで『怪物』という映画が気になった!という方は是非見てみてくださいね。既に見たことがある方は感想や考察などぜひコメントしていってください!

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