【普通って何?】村田沙耶香『コンビニ人間』紹介ー変わった主人公の視点から見るコンビニの「音」と「声」ー


今回は村田沙耶香さんの『コンビニ人間』という小説を紹介します。
この記事を読んでいただくと、
- 『コンビニ人間』がどんな作品か
- どんな魅力があるか
- どんな人に特にオススメか
などがネタバレなしで分かるようになっていますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
既に読んだことがあるという方はコメントに感想など書いて行ってくださいね。

作品情報・特にオススメな人
作品名 | コンビニ人間 |
著者 | 村田沙耶香 |
出版 | 文藝春秋 |
ページ数 | P.160 |
受賞 | 第155回芥川龍之介賞 |
『コンビニ人間』は芥川賞受賞以降、かなりのヒットになり現在は100万部を突破しています。かなり爆発的な人気が出た作品なので、内容は知らなくてもタイトルだけでも聞いたことがある方が多いのではないでしょうか?
さらにこの作品は、約30の言語に翻訳されています。日本だけでなく世界にも強い印象を与えた作品でもあります。
- 純文学が好きな人
- 風変わりな主人公の作品が読みたい人
- 芥川賞受賞作品が読みたい人
- 偏らない考えを持ちたい人
あらすじ

コンビニエンスストアは、音で満ちている。
小倉恵子はコンビニバイト歴18年の36歳。独身、彼氏なし、一人暮らしで日々コンビニの食べ物を食べ、水を飲んで暮らしている。
彼女は少し奇妙がられる子供時代を過ごした。
死んでいる小鳥を見つけたとき。周りの子どもが泣いている中母親に「焼き鳥にしよう」と言った。
取っ組み合いの喧嘩をする同級生の動きを止めるためにスコップで殴った。
そんな恵子が「普通」になれる場所、それがコンビニであった。決まった服装をし、決まった声を出す。
アルバイトを始めた大学生のころは「普通」になれる場所として機能していたコンビニだったが、36歳でアルバイト生活だと周囲からの反応も変わってくる。結婚をしたり、就職をして社員として働くことが求められるようになってくる。
そんな頃、白羽という男性が新人アルバイトとしてやって来る。彼は婚活を目的としてコンビニアルバイトを始めたという。
そして、ひょんなことから恵子と白羽の同居生活が始まって…?
魅力

「普通」から逸脱する主人公
この作品の主人公であり語り手の小倉恵子はあらすじでも言ったようにかなり変わった人物です。
人の感情や痛みを考えない行動を取ったり、周囲の人が経験している恋愛や結婚、就職をしていなかったりと、周囲から浮いている様子が読んでいて伝わってきます。
しかし、この浮き方とは言っても、発達障害やセクシャルマイノリティなどの分類を与えられているわけではないので、どこの型にもはまっていない人物として描かれているんです。
この作品を読んでいただければ、多様性の容認をメッセージとして含めている作品ではないということがわかると思います。
この主人公に共感できる部分はあっても完全に一致するという人はごく稀なんじゃないでしょうか。独特な視点や考えをもつ主人公の見る世界を読んで、どう感じるかは読者次第です。
恵子と、関わる周囲の人々とのやり取りはかなり日常に寄り添っていて軽いものが多く、コメディらしさも感じられる作品になっているので、純文学が苦手だと思っている方でも楽しんで読んでもらえると思います。
脇役になりすぎない周囲の人物
恵子の周りには母親、妹、バイト先の人々、友人などがいます。これらの人物にもそれぞれ名前が与えられていて、作品の中で重要な役割があるように感じました。
これは恵子の視点から語られる物語だからこそですが、それぞれの人物の言動が見たまま表されているので人物の特徴がはっきり出るのです。恵子が鋭い視点で周囲の人物を観察し、分析しているため脇役がかなり人間性の強い脇役になっています。
このようにかなりしっかり作られた人物像がある脇役たちによって恵子が「普通」ではないことを強調させる働きを持っているんじゃないかなと思います。
でも、この作品で「普通」とされている周囲の人物もそれぞれ特徴があって一緒くたにはなっていないんですね。ここに凄くリアリティと感じましたし、面白いポイントでもあると思いました。
物語に深く関わる人物ではないのにしっかり役目を果たしていて、尚且つ話を進めるのに邪魔にならない程度の人間性を描いていて、かなりバランスがうまいと素人目にも感じました。いろんなキャラクターが出てくるので読んでいて飽きが全然なかったです!
作品自体のボリュームもそれほど大きくなく読みやすいので、長い小説が飽きてしまって苦手という方にもオススメできる作品です。
音と声の表現
この作品の最大の特徴で最大の魅力が、豊かな音や声の表現だと思います。
コンビニの物音や雑音、人の声などが瑞々しく表現されています。コンビニという私たちにとって非常に身近な場所を選んでいることも相まって、その場所に本当にいるかのようにコンビニの空気を味わうことができます。
そして、これらの音の表現によって、恵子にとってコンビニがどんな場所かを感じ取れるのではないでしょうか。音の一つ一つを拾ってコンビニの「声」を聞くという新しい感覚に、私は感動しました。
声で言えばこの作品は、恵子の独白もありますが、かなり人間同士の会話が多く書かれているような印象があります。純文学じゃこのタイプは珍しいんじゃないですかね。
でも、その会話の表現が恵子の内面を表すのに役立っているんですね。他の作品だと他者との会話は少なく、語り手が心の中で考えていることや五感で感じ取ったことを言葉でつらつら書いてあるイメージじゃないですか。それが『コンビニ人間』では、恵子の内面を映すのに他者の存在が強く関わっているんです。
会話の中で恵子がどんな人物か、他者との会話を通して恵子が何を考えているかがわかるようになっているので、会話が多くても凄く純文学的に感じました。
「音」や「声」の表現は結末のカギにもなっていると思うので要チェックです。
まとめ
今回は村田沙耶香さんの『コンビニ人間』という小説を紹介しました。
読みやすく面白いし、しかも「普通」とは何か考えさせられる作品で、私は老若男女問わずオススメできる作品だと思っています。
周りとはちょっと違った感覚を持つ恵子。婚活のためにアルバイトに新しく入った白羽との関係はどうなってしまうのか?まさかの同居生活の続きが気になる方は自分の目で確かめてください。
もしこの記事を読んで少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ小説『コンビニ人間』を手にとってみてくださいね♪


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