【感想・考察】宇佐見りん『推し、燃ゆ』ー推しを解釈する主人公を、本作品を、解釈してみようと思うー

2023年2月22日

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Yuu
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こんにちは!Yuuです♪

以前ブログで紹介した『推し、燃ゆ』という作品。紹介はいつも結末や内容の重要なところは語らず、まだ作品を読んでいない人が読みたくなるような記事を心掛けている。つまり、感想が書ききれないわけだ。

ということで、今回はネタバレもがっつり含めて感想や考察を語っていこう!!
まだ読んでいないという方は先に本作を読むことをお勧めします。

↓以前この作品を紹介した記事はこちら。

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感想・考察

あかりとの共通点

こんなところに感想やら考察やらと長々と書いていこうとしているということは、つまり私にこの作品はかなりぶっ刺さった作品というわけだ。

この「刺さる」というのは、好きとか嫌いとかそういう話ではない。どちらかというと、好きな作風ではなかったんだが、この1つの物語について考える時間が長かった。特に、主人公あかりとの共通点も感じたことからいろいろと考えさせられた。

あかりは年上の男性アイドルを推している。彼女の推し方は「作品も人もまるごと解釈し続けること」。解釈したことは、彼女のブログを通して発信しているらしい。

ほら、もうこの時点でかなり共通点が見つけられる。

もちろん、私にも推しがいる。今にも、過去にも。あとブログをやっていることもね。あと、何かを解釈することに意味を見出しているところも少し似ているような気がした。

推しがいるという話で言うと、私にはこれまでお金をかけてしっかり推してきたアイドルが女性3人、男性1人いる。

ただ、「推し方」に関してはかなり違っている。

私は推しによっても違うが、単に顔や人生観やパフォーマンスが素敵だと思うような憧れのような感情だったり、そこから発展して信仰に近い感情だったり、若い子だと親のような目線で見ている子もいるかも。その人物が発した言葉全てを記録したり、ステージすべてを見るようなマメな、全力で注ぎ込むタイプのオタクではない。
あくまでアイドルと偶像、作り上げられた芸能人としての姿を尊敬している状態。

対してあかりは、作品を読んでいる限り、本当に推しを解釈するということ以外には興味がないらしい。もちろん「好き」という気持ちはもちろんあるのはよくわかるのだが、恋愛対象とか、現場での人との交流を楽しむとか、ただキラキラしているアイドルとして見ているとかいう意味での推し方を一切していない。

彼が発した言葉を集め、そこから彼の特性、魅力、内に秘めたものを分析していく。これで彼のことをだんだんと理解していこうとするのがあかりにとっての「推し活」らしい。

この姿勢が個人的にはかなり気に入っているポイント。
あかりは理解しようとするけれど、推しのことをすべてわかった気になっているような様子がないところ。

自分自身がよく、結局推しの本当の姿なんて見たことないしあくまでファンと推しの関係なのにわかった気になるなんて残酷だ、と考えながらオタクをしている。たまにいる、この子ってこうだからーみたいな勝手な理想を押しつける人。それにそぐわない行動を少しでも取ると勝手に「失望した」とか言う。
常に一緒にいる家族ですら本心では何を考えてるのかわからないし、実際自分が理解してもらえないことだってあるのにって思う。

こうやって普段自分が考えていることと作品の登場人物のスタンスとが重なったとき、あぁ~好き。ってなる。

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推しの話はこのあたりにして、次の共通点がブログ

作中に出てくるあかりのブログの文章が私はかなり好きです。普通に語彙力高いし、言いたいことがしっかりまとめて言葉で表せるってすごいなーと感心してしまった。私もブログをやっている身ではあるが、まとまった文章を書くのは苦手だと認識しているのでシンプルに尊敬。

あかりは現実での人とのかかわりが得意ではない分、文章のほうがうまく言葉を伝えられるのだろう。ここら辺はまたこの後に書く病気の話と関わってくるかも。

私も、推しの事に関してはブログには全く書かないが、小説や映画について分析して自分の中で解釈しようとする。解釈する物の対象が推しの言葉か創作作品の表現かという違いなだけで、やっていることは同じような気がした。

これだけの共通点をただの大学生の私でも複数発見できるんだから、たくさんの人があかりに共感できる要素があって人気の小説になっているんじゃないかと思う。やはりこの作品を読むうえで生きづらさを感じていない、かつ推しがいない人というのはあまりストーリーは共感できず、楽しむことはできないのかもしれない。

病気のこと

あかりは病気を持っている。病名こそ明らかにされていないが、読んでいく中で「この描写は病気によるものなのかもしれないな」「もしかしたらこの病気かな」などと考えながら読むことはできるんじゃないか。

とりあえずあかりの性質をばっと挙げてみたい。

  • バイト中のパニック(順序付けが苦手?)
  • 忘れ物が多い
  • 文字を覚えるのが苦手、記憶が難しい
  • 体が重い
  • 感覚過敏(?)
  • 思考の跳躍(?)

ただ私が作品を読んでいた中で拾っていったのでもしかしたら読む人にとってはそうか?と思うものもあるかもしれませんが。見た感じだと、発達障害や学習障害っぽいものと、身体的なものがありそう。

当てはまる病名はあるかもしれないが、作品で明記されていないのでこっちが勝手に特定するのも野暮かなと。とにかく、なぜ主人公を病気を持った人物にしたのかを私なりに考えてみたい。

私は、この作品であかりという人物を見ていてすごく今風な作品だなと感じた。今は発達障害などの診断が増加している。おそらく、その病状を持つ人が増えているというよりは病名がつくものが増えたり、診断が身近なものになったからだろうと思っている。大人の発達障害やグレーゾーンなどという言葉も一度は耳にしたことがあるだろう。つまり、これまで診断されてこなかった病気にあてはめられる現代人が少なくないのだ。

このように明確化される生きづらさを抱えた人間を描く手段として、病気を持つ主人公の視点というものを用いたこの作品には新たな発見が多くあった。普通に自分の世界だけで生きていたらわからない世界を、小説の語り手の視点を借りて生きている感覚がした。

「病気」というモチーフを使った1つ目の理由は、現代らしさ、そして新たな視点の提供のためなんじゃないかなと思う。

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一度あかりの病気の話からは離れるが、私の印象に残った文が2つある。あ、すぐ病気の話に戻りますね。

「あたし自身の厄介な命の重さをまるごとぶつけるようにして、叫ぶ。」
「推しのいない人生は余生だった。」

このような表現からもわかる通り、あかりは自身が社会の役に立っていない、厄介な命である自覚をしている。でも、推しを応援しているときは何かの一部になり、誰かの役に立てているような感覚があったのではないだろうか?

推しのためにグッズを買ったり、ライブで声を届けたり。仕事をするようにあかりは稼げないし、多くの人に利益を生み出すことはできていないけど、「推す」という行為はあかりにとって「厄介な命」ではない瞬間を実感できるものだったのではないか。

つまり推しはあかりの「背骨」なのだ。推しがいなくなったらあかりは厄介な命でしかないとも捉えられる。

病気であることが彼女がアイドルを推していい理由になるのではなく、彼女が病気であることで推すことでしか自分の存在意義を見出せなかったのではないかと思う。これが、あえて主人公あかりを病気がある人物に描いた理由の2つ目だと考えている。

結局わからない「内面」

この作品の一番大きいテーマが、「結局人の内面はわからない」ということだと思う。

結末でも、あかりの推し「真幸」がどうなったのかわからない。解釈のしようがないことを悟る。諦める。推しがファンを殴ったという事件からこの物語は始まるけれど最後まで誰を殴ったのか、どうして殴ったのかが噂などはあるけれど本当の事はわからない。

一見謎が解決しないもやっとした結末のように見えるが、私はこの「わからない」ということが解決だと思っている。

生きづらさを感じるあかりは周りから全くといっていいほど理解が得られない。病名をもらってもだ。この点に関しては、今時病名をもらっているのに周囲に何も配慮されないことは滅多にないので脚色強めだが、まあ他者理解が難しいということを表す手法と捉えておこう。

真幸は、芸能人というたくさんの人から視線を浴びる職業でも、自分を理解している人はいないことを自身で分かっているといったような発言をしている。彼の本当の内に秘めた感情は目に表れる。そこがあかりにとって彼との共通点であり、魅力的に見えていた。

とにかく、ぜーんぶわからない。わかるように見えてわからない。

このテーマを含めた本作品を読んで、他人への共感力と想像力は持ちながらも全てをわかった気にならない上で、わかってあげたいと努力する必要があるんじゃないかと思った。純文学に主題(メッセージ性)を見出すのは好ましくないと言う人もいるかもしれないが、私からするとこのようなメッセージ性を受け取ってもいいのかなと思えた。

まとめ

今回は宇佐見りんさんの芥川賞受賞作品、『推し、燃ゆ』の感想や考察を語っていきました。

ここまでいろいろと考えたことや思ったことを書いていきましたが、意外と私はこの作品そんなに好きな作風ではないんですよね。でもこれだけ感想を書きたい!と思えるということは好き嫌い関係なく人の心を動かせる力がある小説なのかもしれないなと感じました。

読んでいる中で思ったことはたくさんあったが、この記事にまとめる際に3つのポイントに絞って感想を整理したのでまだまだ考察の余地はありそう。文章表現とかでもっと注目したいところもあるのでそれはまた個人で深めていきたい。

この作品をすでに読んだことがある方はぜひコメントに感想や考察を書いていって教えてくださいね。

それでは今回はこのへんで。

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Yuu
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Posted by Yuu