【怖い?】今村夏子『むらさきのスカートの女』紹介ー読めば読むほど新たな謎が生まれるー


今回は今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』という小説を紹介します。
この記事を読んでいただくと、
- 『むらさきのスカートの女』がどんな作品か
- どんな魅力があるか
- どんな人に特にオススメか
などがネタバレなしで分かるようになっていますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
既に読んだことがある方はぜひコメントに感想や考察など書いていってくださいね♪
作品情報
作品名 | むらさきのスカートの女 |
著者 | 今村夏子 |
ジャンル | 心理フィクション |
出版元 | 朝日新聞出版 |
ページ数 | P.160 |
今村夏子さんは、独特な視点で描く小説で人気を集めている作家さんです。この『むらさきのスカートの女』は2019年に第161回芥川賞を受賞していますが、そのほかにも太宰治賞、三島由紀夫賞、河合隼雄物語賞、野間文芸新人賞など、さまざまな賞を受賞しています。
2020年に芦田愛菜さん主演で実写映画化され、注目を集めた『星の子』もまた、今村さんの作品です。
小説の方は読んだことがないのですが、映画はいかにも純文学!という感じの要素を引き継いだ作品になっていました。複雑なテーマを扱いながらも、柔らかい雰囲気で素敵な作品なのでぜひそちらも観てみてくださいね。
アマプラで観れるのでぜひ!→Amazon.co.jp: 星の子を観る | Prime Video
『むらさきのスカートの女』の話に戻りますが、芥川賞受賞は2019年上半期にもかかわらず、2021年に話題が再燃しました!
一般の方が「TikTok」で「何も起こらないのに怖い」と投稿したところ、反響を読んだのだとか。その影響もあってか、サイト『ほんのひきだし』「本屋で今検索されている本ランキング」(2021年3月17日~3月23日)ではベスト10にランクインし、再び注目の作品になりました!
- 芥川賞受賞作品が読みたい人
- 短めの小説が読みたい人
- ゾワゾワする作品が読みたい人(ホラーではない)
- 謎多き人物と友達になりたいと思ったことがある人

あらすじ

「私(権藤)」の住んでいる町には、「むらさきのスカートの女」と呼ばれる人物がいる。
この「むらさきのスカートの女」は、「私」が暮らしている地域では皆に知られている風変わりな女性であった。謎多き「むらさきのスカートの女」だが、「私」は友達になりたいと思っている。
そこで、「私」は友達になるべく、自身が働くホテルで「むらさきのスカートの女」が働けるよう手回しをする。「私」と同じホテルで働き、他の人物とも関わっていく中で「むらさきのスカートの女」は変化していく。
そんなとき、ある噂が立ちトラブルへと発展していく。
私とむらさきのスカートの女は友達になれるのか?むらさきのスカートの女はどうなってしまうのか?
というお話です。
魅力

解決しては生まれる謎
この作品が読む人を惹き付ける魅力の1つが、謎が解決してはまた新たに生まれるという点です。
初め、読んだ多くの人が「むらさきのスカートの女とはどのような人か?」という疑問をまず持つのではないかと思います。
作中では、自称「黄色いカーディガンの女」こと「私」という人物によって語られるのですが、この「むらさきのスカートの女」がどのような人物かが「私」視点で徐々に明かされていきます。しかし、わかっていくこともある分、不明になっている部分があることに「私」視点の語りによって読者は気づかされていきます。
このような、謎の解決と新たな謎の発見の繰り返しでこの作品は構成されています。
そのため、はやくこのモヤモヤした部分が明かされてほしい!という気持ちで世界観に引き込まれ、私はどんどんページをめくってしまいました。

最後まで引きつけられる作品ですが、一体どんな結末が待っているのか?それは読んで自分の目で確認してくださいね!
徐々に変化する人間関係
この作品の1つのテーマに、「人間関係」があると思います。
『むらさきのスカートの女』では、会話が多く書かれています。しかし、この会話は「私」と誰かの会話ではありません。ほとんどの対話が「私」が会話に参加しない、第三者目線で他の人同士が話している場面を描いたものなのです。
このように、第三者の視点で周囲の人物のやりとりを見ることで、人間関係の構築や変化が面白いくらいにはっきり描かれているのです。
物語後半は、ある噂話からトラブルに発展し、「むらさきのスカートの女」を取り巻く職場の人間関係が大きく変化していきます。その様子も、私は関与せずにひたすら周囲で起こっている会話が書かれているため、実際に自分がその場面を見ているような気持ちになります。
人間同士のやりとりを目の前にして、人間がどんな生き物なのか、怖い部分まで客観的に見ることができます。噂話の広がり方や不正確さ、すれ違いなど、私達も日常で普通に行っていることがまざまざと描かれます。
このような人間関係の変化を第三者視点から見ると読者の共感を得たり、ハッとさせられたりするところが、この作品の面白みになっていて、魅力だと思います。
会話に参加していない目線から描かれるからこそ見えてくるものがあり、そこが「怖い」と話題になる理由なのではないでしょうか。

「私」という人物
この作品を読むときに、私が最も注目してほしいキャラクターは、実は語り手である「私」という人物です。
ここまで読んでいただけた方は分かると思うのですが、この作品は「むらさきのスカートの女」を中心に物語が展開していきます。
「私」視点で「むらさきのスカートの女」を取り巻く出来事が描かれているのですが、この視点が少し独特なのです。「一体どこから見てるの?」というものや、「なぜ知ってるの?」という部分まで描写されます。
「私」に対しての疑問は数ページで解決するものから、数十ページにわたる伏線になっているものもあります。
きっと一度読んだら「私」の言動に注目して読み返さずにはいられなくなるでしょう。
このような「私」目線の描写や、不思議な雰囲気もまた、「怖い」と感じる方が多い理由なのではないでしょうか。
ホラーとは違い、ずっとゾワゾワするようなどちらかというと“ヒトコワ"的な怖さかもしれないですね!
また、物語が進むにつれて、「私」の考えにも変化が表れています。はじめは「むらさきのスカートの女」と友達になりたい、という願望でしたが、様々な出来事や環境の変化に伴って「私」にも変化が起こっているように思います。
そして、物語終盤では「私」も大きく関わる物語へと発展していきます。
結局「私」は何をしたかったのか?どうなりたかったのか?などを考えながら読むとより楽しめると思います。

まとめ
今回は今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』という小説を紹介しました。
「何も起こらないのに怖い」と話題になった作品でしたが、純文学好きな私にとっては後半の展開はかなりの急展開で、何も起こらない、ではないんじゃないかなと思ってしまいました(笑)
エンタメ系の作品が好きな方やよく読むという方にとっては、この結末は不思議な気持ちになるかもしれません!
この記事を読んで少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ『むらさきのスカートの女』を手にとってみてくださいね♪

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