【衝撃の展開】綿矢りさ「ひらいて」紹介ー好きな人の恋人を、奪うー


今回は綿矢りささんの「ひらいて」という小説を紹介します。
この記事を読んでいただくと、
- 「ひらいて」がどんな作品か
- どんな魅力があるか
- どんな人に特にオススメか
などがネタバレなしで分かるようになっていますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
既に読んだことがあるという方は、コメントに感想や考察などぜひ書いていってくださいね♪
作品情報
作品名 | ひらいて |
著者 | 綿矢りさ |
ジャンル | 中編小説、恋愛小説 |
出版元 | 新潮社 |
ページ数 | p.168/p.189(文庫本) |
著者の綿矢りささんは「蹴りたい背中」で第130回芥川賞を過去最年少の19歳で受賞しており、現在でもこの記録は塗替えられていません。

そして、この「ひらいて」という作品は「蹴りたい背中」以来久しぶりに高校生の青春と恋愛を描いた作品なんだとか。2021年に首藤 凜さん監督、山田杏奈さん主演で実写映画化もされ、話題を呼びました。
- 若さゆえの爆発的な恋を思い出したい人
- 純文学が好きな人
- 映画版「ひらいて」を観た人

あらすじ

突然ですが、タイトルにあるように、あなたが好きな人に意外な恋人がいたらどうしますか?

主人公の木村愛は、華やかでモテる高校3年生。愛には、1年生のときから心を惹かれている人物がいる。西村たとえ。物静かで哀しい眼をした地味な男子で、愛は自分だけが彼の魅力に気付いていると考えていた。
しかし、ある日、たとえが彼の恋人から手紙をもらっていることに気付く。大胆な行動で手紙を盗み差出人を確認すると、1年生のときに同じクラスだった新藤美雪からであった。美雪は持病を持ち、美人だが少し周りから浮いた存在であった。この2人が付き合っていたなんて。
衝撃を受けた愛は、たとえを手に入れたいという気持ちが方向を変え、美雪に近付きまさかの行動を起こす…。恋に振り回され暴走していく愛、この3人の関係はどうなってしまうのか??
というお話です。
魅力

大胆なのになぜか共感できてしまう
私が個人的に綿矢りささんがもともと好きで、よく小説を読むのですが、傾向として「主人公女性のクセが強い」というのがあると思います。とくに「ひらいて」はすごいです。愛は、自分の欲望のためなら普通の人は考えられないような行動をします。でも、なぜか共感ができてしまうのです。
綿矢りささんは、普通の人なら立ち止まってしまう場面で突っ走ってしまう人間というものを描くのが上手いんだと思います。
きっと、私たちの中にも愛ちゃんのような、好きな人を手に入れたくてどうしようもないという思いを持つことはあると思います。若さが爆発してしまっている高校生ならなおさら。でも、私たちはどこかで諦めるか、想定内の行動をするなり何かしらの方法で区切りをつけます。そこで立ち止まらないのが木村愛。
想定外の行動をしてなかなかにヤバいので、根本の部分には共感しながらも物語の展開を楽しむことができると思います!
語彙力
この作品、基本的に愛ちゃん視点で描かれているんですが、語彙力がすごいんです。心理描写も、周りで起こっている出来事も、細部まで日本語総動員で描かれているような印象です。
その言葉、一つ一つが引っかかってぶっ通しで読むのが疲れてしまうくらい。私が好きな一部分を引用します。
ぬるい水で何倍も希釈された薄くけだるい午後の授業のなか、私の身体の真ん中の熱く固い矢じりは、終業のベルばかり待ち望むクラスメイトたちの合間を縫い、窓際へ、彼へ、急激に引き寄せられる。強い磁力で、じりじりと、抗いがたく。
たとえ五千年の歴史が、どんな誤りを犯していても。
綿矢りさ「ひらいて」新潮文庫 P.13
周りの雰囲気や実際にあるものをとらえながらも、愛の視線や心の中心には彼がいることが的確に、ユニークな言い回しで表されていると思います。ここだけではなく、全体的に連想ゲームをしているような言葉選びをしているので、読んでいると自分の中にたくさんの言葉が蓄積されていくような気がして素敵です。

読めば読むほど考えが変わる
この作品、理解できないことや納得できないことが苦手な人にとっては、もしかしたらあまり好きになれないかもしれません。
本作では、全体を通してはっきりと明らかにされないことが多くあります。描写は明確なのですが、あくまで愛の視点で描かれているものであって、人の心までは読めないようになっているんですね。だから、愛以外の人物がここでなぜこんな発言、行動をしたのかがほとんど描かれいません。
それだけでなく、愛自身が自分の感情を理解しきっていないんじゃないかな?という部分もありそうです。
こういう曖昧なところを、初めはわからなくても、読み直していく中で自分なりの答えを見つけたり、新しい考え方ができたりすると思います。もちろんその答えは自分一人のなかでも変わるし、他にこの作品を読んだ人とも違ってくるでしょう。
読み方によって解釈の幅が生まれる作品、面白いと思いませんか?読み終わったあとに、他の人の感想や考察を調べてみるのもきっと楽しいですよ。
ひとつ前に紹介しましたが、それほど長い作品ではないのに語彙がすごく多いんですね。独特な言い回しがたくさんあるので、読み返したときに、前回サラッと読み飛ばしてしまっていた素敵な言葉があったことに気が付くんです。
そんな特徴もあって、「ひらいて」はついつい何度も飽きずに読んでしまうような魅力があると思います。

まとめ
今回は綿矢りささんの「ひらいて」について、ネタバレなしで紹介していきました!
個人的に大好きな作品なので愛があふれてしまったのですが、まだ読んでないという方にも魅力が伝わっていたら嬉しいです😊
この記事を読んで少しでも興味を持っていただけると幸いです。読んだ後も余韻に浸れる素敵な作品なのでぜひ手に取ってみてくださいね。


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