【骨になったダチと最後の旅】映画『マイ・ブロークン・マリコ』感想・考察│短時間で楽しめる考察好き大歓喜作品


今回は2022年9月公開の『マイ・ブロークン・マリコ』という映画についての感想や考察を話していきます。
実はこの作品、観たいと思っていたのですが、劇場に行かずだったんです…。そしたら最近アマプラに追加されていて、ようやく観ることができたのですが、かなり好きな作品で劇場で観なかったことをかなり後悔しています。そんな作品を紹介していきますよ。
この記事を読んでいただくと
- 『マイ・ブロークン・マリコ』がどんな作品か
- 特にどんな人にオススメか
- 映画素人大学生の感想や考察
が分かるようになっているのでぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです!
観たことがある方は、コメントに感想など書いていってくださいね。
作品情報
公開日 | 2022/9/30 |
上映時間 | 85分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | タナダユキ |
脚本 | 向井康介 タナダユキ |
原作 | 平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』(漫画) |
原作漫画は2019年に『Comic BRIDGE online』に掲載されたのち、TV Bros.コミックアワード2020大賞、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、このマンガがすごい!2021オンナ編第4位などたくさんの受賞歴を持つ凄い作品です!
残念ながら管理人は原作の方は未読なので、了承のうえ記事を読んでいただけると嬉しいです。
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あらすじ・特にオススメな人
ある日、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)を襲った衝撃的な事件。それは、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したという報せだった――。
彼女の死を受け入れられないまま茫然自失するシイノだったが、大切なダチの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、居ても立っても居られず行動を開始。
包丁を片手に単身“敵地”へと乗り込み、マリコの遺骨を奪取する。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか…。
シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へと彼女の遺骨を連れていくことだった。道中で出会った男・マキオ(窪田正孝)も巻き込み、最初で最後の“二人旅”がいま、始まる。
映画『マイ・ブロークン・マリコ』公式サイト (happinet-phantom.com)
- 短時間で楽しめる作品が観たい人
- 結末がはっきりしない作品が好きな人
- ギリ重すぎないくらいの作品が好きな人
- 作品に入り込みたい人
こちらの作品、個人的にはとても楽しめたのですが、わかりやすい事件だったり伏線回収が気持ちいい作品が好きという方はもしかすると合わないかもしれないです。
どちらかというと人間同士のドラマや空気感、言葉の重みなどで成り立たせている純文学的な映画だと思っているので、そういうのが苦手な方にはお勧めできません。
繊細な作品だからこそ賛否があり、好き嫌い分かれる作品でもありますが、合う方にはしっかり突き刺さる作品だと思います!
感想・魅力(ネタバレなし)


遺骨とのバディ
まず、この作品の一番面白いところが、遺骨を抱えて旅をするっていうところです。バディもののロードムービーはよくある設定ですが、バディの相手が遺骨というのは前代未聞ですよね。
かなりぶっ飛んだ設定で、この世界観にまず心惹かれました。魅力的な作品です。
相手が遺骨であって、生きた人間じゃないのでシイノは基本的に話し相手がいないんですよね。でも、この遺骨を持ったままで旅をして、生きていたころのマリコを思い出し、思い出の中のマリコと対話をしていくんです。
その記憶も、楽しいものや美しいものだけではありません。シイノとマリコの間には共通の記憶がたくさんあります。旅をしながら2人が経験した過去を見ている側も追体験しているような感覚になります。
わかりやすい感動の物語!という感じではないのですが、物語のスピード感や雰囲気になんだかグッとくるものがありました。
重いテーマでもコメディ色もあり
親友が死ぬというシイノにとって大事件から始まるこの作品。
見ている側も後々わかっていくのですが、死んだマリコも相当な人生を送っていました。生きていたころのマリコについてのシイノの回想も内容がかなり重め。
だけど、それほどズーンとならずに作品を観られたのは、所々に含まれるコメディっぽいセリフのおかげだと思います。
でも、コメディ色はありながらも、大切な人の死というテーマを軽視するような笑いどころはありません。しっかりくすっと笑える場面と、ある程度重さがある雰囲気を作らなければならない場面の切り替えが素人ながらしっかりできているなと感じました。
予告編の遺骨を抱えてシイノがベランダから飛び降りるシーンなんて漫画的に言えばかなり滑稽なシーンですよ。漫画らしい軽さも含みながらも、シイノやマリコがこれまで経験してきた出来事や関わってきた人間関係からそれなりのリアリティも感じられるヒューマンドラマにさせているのもかなり好きなポイントです。
このコメディ色も含まれているというのはあまり予告編では伝わりにくいですが、親友の死というつらい現実に直面しながらもホッと心が暖かくなる場面や少し笑える場面もあるので、最近心が疲れてるなんて人にはちょうどいいくらいの作品かもしれないです。作品の時間自体も短いので、忙しい中でもサクッとほっこり、感動、ふふっとしたい人にもオススメです。
役者の熱量がすごい
もうね、ここを語らずにはいられないですよ。すばらしいしか言えない自分が情けないです。もちろん監督などの演技指導も相当細部までこだわったんじゃないかと思います。いやー素敵。
まず、永野芽郁さんのシイノトモヨ力と奈緒さんのイカガワマリコ力がすごい。
永野芽郁さんって声も高めで、ふわふわして可愛い印象が強いのにここまでシイノに持って行ったのが本当に女優魂感じましたね。
包丁持ってマリコの両親を脅すシーンはもう永野芽郁の皮を被った何か別の人格でした。ほかにも調べたところによると、喫煙シーンのために美容タバコを吸う練習をしたり、シイノのキャラに寄せるため声を低くしたりなどの役作りをしていたようです。
これまで特に注目していた女優さんではなかったのではっきりしたことは言えませんが、既にそれなりの大衆イメージをつけている状態での永野芽郁がまた新しく殻を破った作品なのではないでしょうか。
そして奈緒さん。私が大好きな女優さんの一人。奈緒さんもかなりカメレオンな方ですよね。
マリコの、過去にいろいろあったからこそ纏う雰囲気みたいなものを奈緒さんの体から発していたように見えました。
素敵な役者さんたちばかりで非常に引き込まれる作品でした…。
感想・考察(ネタバレあり)


シイノ、マリコ、マキオというキャラクターについての考察
この作品を観てキャラクターの人間性がかなり深く練られているような感じがしました。それをチラッと見せたりしっかり見せたり。映画にとっての重要事項と、ある程度把握しておけばいい情報の区切りがはっきりしていて無駄のない作品だと思いました。
シイノはさっぱりした性格で、彼女にはマリコしかいない。
見ている限り、未成年で喫煙していたり、少し冷たい印象がある彼女には幼少期からあまり人が寄らなかったのではないでしょうか。
あまりシイノの家庭環境については詳細が語られていなかったので分かりませんが、「両親が離婚した」と言っていた場面はあったのでそこそこ複雑な環境にいたのかもしれません。
そんな中で、環境に問題があったマリコはシイノを頼りにしていたし、シイノもまたマリコのことをほっとけなかったのではないでしょうか。
マリコは、簡単な言葉にまとめてしまうとめんどくさい人間。でもめんどくさい人間は何かがないと生まれないんじゃないかとこの作品を観て思いました。
子供の頃から人格否定、大切なものを奪われてきた人生で、自分のことを好きになってくれる人は誰でも許してしまうのです。だから自分は彼氏を作っては言うことを何でも聞き、暴力も振るわれる。それなのに一番自分を大切に思ってくれるシイノのことは束縛してしまいます。
つまり、ここの2人の間で共依存が起こってしまっているのではないでしょうか。一見素敵な友情関係に見えても、マリコのめんどくさかったり、重すぎたり、おかしくなっていたりする記憶をしっかり描こうとしたのはこの共依存関係をはっきりと示すためのものではないでしょうか。
そして、この共依存から対照的に描かれるのが旅の途中で出会うマキオだと思います。
マキオはシイノに自分を大切にするように言います。また、シイノに何かを与えたり、助けたりする場面では、相手に何をしてあげたいかではなく、自分は何が好きか、何をされたら嬉しいか、で手助けをしているように見えます。
ひとりで自暴自棄になって旅を自分中心で生きているシイノを助ける人物としてだけでなく、シイノやマリコという中心人物の対照的な存在として機能しているんじゃないかと思います。
それにしてもその作品におけるマキオの安心感はすごい。この人がいれば物語が勝手にでもうまく進んでいくんだろうなっていうリアリティのかけらもない信頼感があってそこもすこし面白かったです😂
マリコの死んだ理由、手紙について
結局最後まで明らかにならないマリコが死んだ理由。最後の手紙の内容も観客には教えてくれませんでした。
この作品の結末や、作品の中に含まれる伏線のようなものを拾いながら考察していきます。
まず、マリコが死んだ理由ですが、作品を観ている感じマリコは自殺をしたと思われるように印象操作されているように感じました。
マリコが死んだことを知ることになったニュースでは「転落死」として報道されていました。
でも、シイノの周りにいたおじさん達が、「SNSで炎上して~」みたいなことを喋っていました。ここだけではありませんが、作品全体を通して私もマリコは自殺したもんだと思わせるようなセリフが所々あるなぁと思いました。
では、本当のマリコの死の理由は何なのでしょうか。
ここを考えるのに、手紙が大きく関わっていると思います。
ラストで、シイノはマリコの父親の再婚相手から脱ぎ捨てていった靴と一緒にマリコが残した最後の手紙を受け取ります。その手紙の内容は映されないのですが、シイノが笑っている様子だけがわかるようになっています。
これが本当に死を覚悟して書いた遺書だったら、シイノは笑っているでしょうか。
マリコは子供の頃から「シイちゃん」に対して手紙にするほどの事でもないことを手紙に書いて渡していました。その内容にいつも笑ってしまっていたシイノ。
つまり、最後の手紙にも、手紙にするほどの事でもない内容が書いてあったのではないでしょうか。
となれば、「転落死」としか報道されないマリコは自殺ではなく、想定外の死だった可能性もあると考えられますね。シイノ自身からの視点でも、おそらくラストシーンの直前までマリコは環境の悪さが原因の自殺だと思っていたように見えます。これはミスリードすごく誘っていますね。面白い。
察し、考えなければならない観客
この作品は見た人が共通してわかるテーマやメッセージ性というものがないような気がしています。上では私なりの考察を展開してきましたが、はっきりしないことが多い分、解釈は観客に任されます。
つまり、見ている側が主体的に何かをつかみ取ろうと思って観ないと、あまり作品としての面白さは感じられないかもしれませんね。
レビューサイトなどでも高い評価と、よくわからず楽しめなかったという低い評価にわかれてしまっている印象です。エンターテインメント性が高い、面白いのがストレートに伝わる作品が好きな方は苦手なジャンルかもしれませんね。
でも、私は考察したいし、一見よくわからないようなことを意味があるように考えるのが好きなタイプなのでめちゃくちゃ好きになった作品でした!
サラッと1回見ただけではつかめないことも多いし、ミスリードもしてしまう作品。だからこそ私はこの作品を映画館で観なかったことをかなり後悔しています。
やはりサブスクだと、家で鑑賞することになりますがノイズが多すぎるんですね。他ごとを考えたり、スクリーン以外のものが視界に入ってしまったり。この作品が劇場公開されたときに行こうか迷って結局行かなかった自分を殴りたい。
残念ながらまだこの作品を観ていないにも関わらずここまで読んでしまったという方、ネタバレ喰らってると思いますが、こういうタイプの作品好きな方はかなりハマる作品だと思っているので、信じて一回見てみてほしいです。
まとめ

今回は、「マイ・ブロークン・マリコ」という映画について、感想や考察を話していきました!
物語のテンポ感、重い内容なのにコメディっぽいやり取りもあるバランスの良さ、映画としての演出など、私にとってかなり心に残る作品でした。明らかにならないマリコの真相や最後の手紙の内容も、考察したり他の人の考えを知るところまで楽しめる作品だなと思いました。
もしこの記事を読んで「マイ・ブロークン・マリコ」という映画が気になった!という方は是非見てみてくださいね。既に見たことがある方は感想や考察などぜひコメントしていってください!
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